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受講生インタビュー

裏方思考のサイエンスライターが「発信力」を求めて出会ったPRという手段―富山佳奈利さん

富山さんは、サイエンスライターとして活動する傍ら、ロボットを作るベンチャー企業「令和工藝合同会社」のCBO(チーフブランディングオフィサー)を務めています。PR塾への入塾動機、PRを学ぶうちに見えてきた新たな目標について、話を聞かせてくれました。

Profile

北海道生まれ、東京都在住。総合電機メーカー、宇宙航空研究開発機構(JAXA)等を経て2016年よりサイエンスライターとして活動。2021年に令和工藝合同会社に参画。ロボットやアンドロイドの社会との関わりやロボットを媒介したコミュニケーションの研究に携わっている。 

富山さん公式サイト

Podcast

令和工藝

サイエンスライターの傍らロボット制作ベンチャー企業CBOへ

―富山さんはサイエンスライターをされていますが、これまでずっと科学の分野でお仕事をしてきたのですか?

科学というよりも、「技術」の分野になります。遡ると、新卒では、国内大手電機メーカーでサーバーの開発に従事し、保守ハンドブック(修理やメンテナンスをする人向けのマニュアル)の作成も担当していました。文章を書くことは子どもの頃から好きで、中学高校時代は賞金稼ぎをしていました。何度かの転職とライフステージの変化を経て、フリーランスで文章を書く道を選びました。途中で4年間ほど宇宙航空研究開発機構(JAXA)で働いたことも、サイエンスというジャンルを強く意識するようになった要因です。

私は子どもの頃からフリーアナウンサーでエッセイストの楠田枝里子さんが大好きで、著書も全部読んできました。高校の修学旅行で初めて東京を訪れた際、当時原宿にあった楠田さんのお店で1冊の文庫本を買い求めました。直筆サイン入りの「ロマンチック・サイエンス」です。時が過ぎ紙も随分変色してしまいましたが、今でも私のバイブルです。当時はまだ、サイエンスライターという職業は知りませんでしたが……。

―サイエンスの分野に詳しいライターさんは重宝されそうですね。

どの業界でもそうだと思いますが、前提条件がある程度わかっているライターとお仕事をしたいという場面は多いと思います。昔と比べてITや医学、理工系のようなジャンルから一般社会へ向けての発信が求められる時代になっています。サイエンスライターが求められる場面は確実に増えていると思います。

―富山さんはライターとして活動する傍ら、オーダーメイドのロボット制作を行うベンチャー企業にも参画されていますね。どのような経緯で入られたのですか?

一言で表すと、偶然です。手探りで始めたラジオ番組の初回ゲストが、後の令和工藝CEO の力石武信でした。当時はただの知り合いで、運よくスケジュールが空いていたという、偶然が結んだご縁でした。力石の「ロボットがいる日常を想像してごらん!」という尋常じゃないロボットを愛に、当初は正直戸惑いましたが、ロボットの話を音声だけで、できるだけ誤解なく伝わるよう工夫したことなどで親交が深まり、その後時々ディスカッションをすることもありました。それから約1年後、力石から会社の立ち上げに誘われた時は、全く予想していなかったので驚きましたね。現在は、会社のCBO(※)(チーフブランディングオフィサー)を務めています。

(※)CBO(チーフブランディングオフィサー)・・・ブランド責任者

コミュニティーラジオ鎌倉FMで『理系の森』のアシスタントを務める

社会とロボットをつなぐため”正しく伝わる”ことに尽力

―令和工藝が制作しているオーダーメイド・ロボットとはどういったものですか?

文字通り、一点物のロボットです。博物館にあるような動物や恐竜、研究者が使うロボット、市販品でないロボットは全部「特注モノ」つまり、オーダーメイドと考えていいでしょう。

弊社では、ロボットを単なるツール(道具)ではなく、工芸品と捉えることで、アート(芸術作品)の域へシフトすると考えています。例えば茶碗。元は道具でしたが、芸術的な処置を施した「工芸作品」と呼ばれる分野があります。観賞用の茶碗って、ちょっと不思議に感じませんか?現在最も身近で自由な道具がロボットだとすると、ロボットそのものや、ロボット技術を用いた芸術表現があっても良いですよね。その時、ロボットは道具から工芸作品になる可能性があると考えています。

―”CBO”とは、具体的にどんな仕事をするのですか?

近年アウトリーチ活動の重要性があちこちで語られています。科学技術の分野では、研究者や研究機関が研究の結果を世の中に広く知らせるために行う活動とその重要性が広く知られてきたのだと思います。この「知りたい」と「知らせたい」。”ただ伝わる”だけでなく、”正しく伝わる”ことが重要です。

弊社の場合は、情報発信だけではなく、「在り方を常に考える担当」と捉えています。ありがたいことに、ロボットは興味を持っていただくことが多いテーマです。ただ、言葉の意味が曖昧だったり、前提知識に食い違いがあることで、お互い誤解しやすいテーマでもあります。令和工藝のCBOは、弊社のロボットにまつわるイメージの交通整理をして、社会とロボットを安全に接続するお世話係だと思っています。意識的なアウトプットだけではなく、リアクションも”発信”なんです。冷静に「この発信で傷付く人はいないか、誤った解釈を招かないか」の観点で接するよう心がけています。

―富山さんは、以前からロボットに詳しかったのですか?

たしなみ程度というレベルです。現在も、特に詳しい方ではないと思っています。ただ、以前から興味はありました。例えば珍しいロボットの展示や、動く実寸大恐竜模型などは、泊まりがけで見物に出かけることがありました。令和工藝のメンバーになってから知ったのですが、私が泊まりがけで見に行ったロボットの大半は、弊社のCEO兼COO(※)である島谷直志が前職時代に手掛けたものだったんです。有名な博物館の恐竜や、著名人のアンドロイドなど、インパクトの大きいプロジェクトがあったので、ご存じの方もきっと多いと思います。

現在、メンバーの中で、最もロボット歴が浅いのは私なんです。ただ、”浅い”ということは最も一般ユーザーに近い目線でロボットやそのプロジェクトを見ることができるというメリットだと捉えています。もちろん全くの白紙からでは難しいので、学生時代に機械工学や情報処理などの基礎的な内容を学んでいたことが生かせています。基礎があれば、最新事情までのギャップを埋める最短ルートが掴みやすいと思います。毎日が勉強ですが、好奇心を満たす楽しい時間でもありますね。

(※)COO(チーフオペレーティングオフィサー)・・・最高執行役員

令和工藝のCEO力石さんが取材を受けた際の様子

ロボット制作を通して文化の違いを再発見 新たな発見が面白い

―ロボット開発は、日本が世界に誇る分野ですね。

そう言って差し支えないジャンルもあるかとは思います。ただ、実際は「ロボット」の4文字がカバーする範囲は大変広く、言葉の定義はふんわりしたものになります。工場で働く産業用ロボットも、ロボット掃除機も、LINEのチャットbotのようなものも、ホテルの受付にいる恐竜も、正義のメカも全てロボットですから…(笑)。「はやぶさ」などで知られる人工衛星も全部「ロボット」としてくくることができるのです。人々のさまざまな思いを投影できる概念なだけに、注意しないと「すれ違い会話」で打ち合せが終わってしまう危険もあるのです。

ロボットを作るための材料やテクニックについては、どこかの国が突出しているという時代は終わったと思っています。もっと細分化された、「指を動かす機構なら、あの研究所」とか、高性能・高品質な部品は世界中で流通するなど、意外とフラットな業界であり、あらゆる競争もまた、ワールドワイドです。

ーなるほど、”日本製が強い”という時代はすでに昔のものになりつつあるのですね。

ただ、一般の人がロボットに対して「好ましい存在」という気持ちを持っている度合いで見ると、日本は特別です。特に欧米と比較してロボットに対してフレンドリーな気持ちを持つ人が多い、ちょっと変わった国に見えるかもしれません。ロボットに対して「道具」というイメージよりも「隣人」や「友だち」というイメージで接する人が多いように思います。これはマンガやアニメの影響かもしれませんね。たとえば”道具の擬人化”によって、ロボットへの親しみが芽生えているのかなと思うことがあります。

ーロボットへの態度にも、日本らしさが表れていると考えると面白いです!

海外といえば、欧米生まれか日本生まれかで、ロボットに特徴的な違いを見つけることがあります。ペットのような存在として開発されたロボットを例に考えても「カワイイ」の基準が違うなと感じたことはありませんか?

文化圏によって、コミュニケーションの際に重要視するポイントに違いがあります。例えば、笑顔を伝えるパーツが「目」なのか「口」なのか。日本ではロボットに限らず、口をデザインされていないキャラクターは多数ありますよね。感情は目で表す文化があります。対してアメリカで人気のキャラクターには大きくてよく動く口元が協調されたものが多いと思いませんか?ロボット制作を通して、こういった文化的な違いを再発見するのも面白い体験ですね。

金属工芸技法の一つ・”鍛金”で作られたイグアナを取材

PR塾で目の当たりにした発信力の素晴らしさ 自らをPRする覚悟できた

―PR塾には、令和工藝さんのCBOのお仕事のために入塾したのですか?

7割がた、”Yes”でしょうか(笑)。これまでも企業の公式サイトの管理者などを担当した経験がありまして、何をおいても「認知されること」が大事だとは認識していました。認知されなければ、こちらが届けたい相手にリーチできません。令和工藝に誘われた当初は、やはりさまざまな想像をして悩んだり迷ったりの日々がありました。丁度その頃、以前読んだはずの『0円PR』の広告がやたらと目に入ることに気が付きました。笹木郁乃さんが理系女子だったことや、再現可能なPR方法が書かれていたことが頭の中を駆け巡り、思い切って申し込みボタンをクリックしました。

―PR塾で学んできて、何か変化はありましたか?

これまで、私の書いたものが役に立っていれば自分自身は裏方でいいと思ってきました。PR塾に入って、発信力を持つことの素晴らしさを目の当たりにし、「もっと自分にも発信力が欲しい!」と思うようになりました。「発信者としての私」が知られることで、すくいあげられる「何か」があるかもしれない。「自分のメディアが欲しい」と思うようにもなりました。

また、企業や代表のメディア露出はこれまでもありましたが、自分たちからアプローチした訳ではなく、あくまでもラッキーだっただけ。こちらからメディアの力をお借りしたいタイミングと、お声がけいただいたタイミングが合致するのは奇跡です。いつまでも運頼みは良くないなと、自分からアプローチを行うようになりましたね。会社が誤ったイメージで受け取られないよう、伝えたい内容を的確に受け取っていただけるように、取り組んでいます。

―PR塾での学びが、会社のPRだけではなく、ご自身のPRにも生かせますね!PR塾の講義はいかがですか?

本講義は毎回すごい熱量で、画面越しの私自身も本当に熱が出てしまうんです。メディア交流会では何度かプレゼンをしたことがありますが、緊張で頭が真っ白になります。他の方のプレゼンを見ているだけでも勉強になりますね。三木佳世子さんがいつもおっしゃっている「この場でいっぱい失敗を経験して、本当の本番に生かしてね」は、心のお守りです。一番の学びはやはり”マインド”でしょうか。受講生にもたくさんの影響を受けています。「これをする」と決めて、本当に実行している受講生仲間が多いので、「私もやらなきゃ」と背中を押してもらっています。

―そうだったんですね。それでは、最後に今後の目標や夢を聞かせてください。

「楠田枝里子さんのようになりたい」という目標は来世に叶えるとして、今世での目標は地味ですが、発信力を付ける事。「富山さんに取材してもらいたい」と思ってもらえるようなライターになりたいです。世間話をするようにリラックスして会話を楽しみ、「そうそう!私が伝えたかったことは、つまりこういうことなの!」と喜んでもらえるフレーズを紡ぎ出す事が、”自分らしい”仕事かなと感じています。

実はサイエンスに限らず、さまざまな仕事をしている方の取材をしています。落語家さんや女性マジシャンなど、特殊な職業のかたに取材したこともあります。ジャンルを問わず、サイエンスの切り口で話題を広げられるところが、私の持ち味だと思います。これからももっと発信力を高めて、親しみやすい言葉でサイエンスの話題を届けていきたいです。

―サイエンスの楽しみ方を知っている富山さんにしか語れないことがありますよね。富山さんの手掛けた記事が世界中の人に読まれるよう、今後のご活躍を応援しています。

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