受講生インタビュー

猫の気持ちになって作った商品が人気に! 6年かけて開発した製品のPRに向けて入塾を決意―太野由佳子

猫の気持ちと使い勝手を考慮して安全性も高い商品を作りたい――そんな使命感を抱き、起業以来ずっと「ネコ目線」のモノづくりを続けてきた太野由佳子さん。これまで、猫に負担をかけないエリザベスカラー、爪切り用マスク、猫の健康を害さない猫砂など、独自商品を次々と開発してきました。口コミで評判が広がり、テレビ出演なども果たしましたが、猫を取り巻く問題についてもっと世の中に知ってほしいという思いでPR塾に入塾。学びを通して得た成果と、これから実現したい世界について語っていただきました。

PROFILE

株式会社クロス・クローバー・ジャパン代表取締役。医療機器メーカーに就職後、大好きな猫の役に立てる仕事をするため、2005年に起業。飼い猫・なるとさんの病気をきっかけに、本当にネコにとって使いやすいエリザベスカラーを作ろうと商品開発を始める。他にも化学物質や香料を添加しない「木だけの無添加猫砂」による健康猫砂市場の創出や、ネコの高齢化に伴った自宅介護をサポートするグッズの開発にも携わる。地域未来牽引企業(経済産業省)、グッドデザイン賞6回受賞。

商品販売ページ:https://kurokuro.jp/

インスタグラム:https://www.instagram.com/nekozuki_jp/

会社ホームページ:https://cross-clover.co.jp/

好きなことを仕事しようと猫関連グッズの販売で起業

―いつ頃から猫が好きなのですか。

物心ついてからですね。両親も猫が好きで、自然と好きになっていました。公務員だった父の仕事の関係で転居が多く猫と暮らせなかったので、自分で飼い始めたのは20歳の頃に家を建ててからです。

―最初は医療機器メーカーに就職したそうですが、動物関係の仕事に就こうとは思わなかったのでしょうか。

動物関係の仕事は獣医くらいしか思いつかなかったので、今のような仕事をしているのが自分でも不思議です。医療機器メーカーは特に強く希望していたわけではなく、土日休みで良いなぐらいの気持ちで入ったというのが正直なところです。休日を利用して動物保護施設でボランティアをしていたのですが、ある時そこに参加していた起業家支援の仕事をしている方に「経営者に向いている」と言われたんです。好きなことを仕事にできると知り、すぐにその気になるタイプなのでメーカーを退職して事業を興しました。

―起業した当初は苦労も多かったようですね。

最初は既存の商品を仕入れて岩手県内の店舗で販売していたのですが、全然上手くいかなくてこれはマズイなと。そこでネット通販に切り替えたところ、販売が伸びていき、その後しばらくして自分で商品開発を手掛けるようになりました。

―どうして自分で商品を作ろうと思ったのですか。

既製品のほとんどは、猫の気持ちになって作られていなかったんです。ペット用品を見ても以前は「いいな、かわいい」くらいにしか思わなかったのですが、展示会などで商品をいろいろと見ていると、実際の猫の習性や生態に合っていなかったり、危険だったりする部分に気付くようになりました。

また、当時飼っていた「なるとさん」という猫が肛門嚢炎になり、術後の傷口をなめるようになってしまいました。それを保護するため、急遽、エリザベスカラーが必要になったのですが、2005年当時は犬用品が主流で、小型犬用の製品を猫に代用することが多かったんです。犬用エリザベスカラーは猫にとって負担が大きく、病気の影響もあってみるみる元気がなくなっていき、何もできずただ見守ることしかできませんでした。これをきっかけに「世の中にないなら私が作るしかない!本当に猫にとって使いやすいエリザベスカラーを作ろう」と決意したのが、ゼロから商品開発をはじめたきっかけです。デザインも製図も勉強したことはなかったですが、商品のイメージは頭にあったので、実際に形にしてくれる工場を探すことにしました。

―工場はすぐに見つかりましたか。

当時は実績や経験がない私のような20代の女性がお願いに行っても趣味でやっている程度に思われて、話も聞いてもらえませんでした。30件くらいの工場に問い合わせて、やっと一社だけ話を聞いてくれる工場に出会えました。第一号製品のエリザベスカラーができたときは、頭の中で考えたものが形になる面白さを感じましたね。その後も改良を続けて、今は初期モデルよりかなり進化したものになっています。

自社開発したエリザベスカラー

入塾後に作ったリリースと企画書は20本、行動量で着実に成果を出す

―ネット販売でもただ製品を並べるだけでは売れないと思いますが、どうやって広めていったのでしょうか。

口コミがほとんどでした。買っていただいた方たちが広めてくれた感じで、特に何か仕掛けをしたわけではありません。動物病院の待ち時間に、ウチのエリザベスカラーを見た飼い主さんの間でも評判が広がったようです。

―販売は順調だったわけですね。それでもPR塾に入った理由は何でしょうか。

口コミで広がってはいましたが、こちらから仕掛けて売るという経験はなかったんです。でも、6年かけて開発した猫の皮下点滴に使用する保定袋が販売開始になるため、広報PRをしっかりやっていきたいと考えました。また、物を販売するのと共に、今回開発する商品のテーマとなった猫の健康問題を世間に伝えていくためには、広報に力を入れる必要があると感じました。そんな時に、信頼している方からPR塾を勧められて、説明会に参加した翌月に入塾しました。

―入塾した最初の印象はいかがでしたか。

それまで広報PRをほとんどやっていなかったので、こんなに広報について学んだり悩んだりしている人がいるんだなとまず驚きました。また、プレスリリース以外にメディアに向けた情報発信の手段を知らなかったのですが、企画書というものがあるのも学べましたし、講師の方が「メディア関係者も初めて電話するときはドキドキする」というようなことを言っていたのが印象的で、いろんな視点から学ぶ大切さを知りました。

―ご多忙とは思いますが、本講義には毎回出席していますか。

ひと通り出席して、ただ聞いているだけだと実にならないのでとにかく行動するようにしています。今まで20本ほどリリースや企画書を出して、きちんと動けばそれなりに反応があるというのも分かりました。入塾前もメディアから声を掛けていただいて、テレビ番組などに何度か出たことがあるのですが、その関係者の方々の名刺を引っ張り出して連絡すると、意外に覚えていてくれたりするのも新鮮でした。

商品開発は自ら猫の気持ちになって行う

企画を考えるうちにニュースや社会情勢への情報感度が向上

―メディアアプローチでの苦労や工夫している点はありますか。

猫の日のイベントなど、動物愛護のテーマがある場合は割と積極的に取り組めましたが、新規でアプローチする際に自分について紹介することに苦手意識を感じています。ただ、経験値が足りないだけかとも思いますので、これから克服していきたいです。

また、メディア交流会にはほとんど出席していて、そこで学ぶことは大きいですね。一からアプローチしてアポイントを取るのは大変なので、相手の反応を知る土台がしっかりあって、すぐに参加できるシステムがあるのは凄いと思います。

―Slackの添削もよく活用していますよね。

一人で取り組んでいると分からないところが多くて、自分では完璧だと思って作ったリリースや企画書がたくさん添削されて戻ってくるので非常に勉強になります。

―雑誌や新聞等のメディア掲載を次々に獲得して、掲載が連鎖するいわゆる「シャンパンタワー」を起こす一歩手前まで来ている印象です。

そうですね。そのために、行動するための材料であるプレスリリースをしっかり書いて、メデイア選定をしっかり行うメージできるようになってきたので、あとはどれだけ行動できるかだと思っています。添削に出すにもネタがないといけないので、常に企画を考えるようになりました。猫に関係するイベントカレンダーも作りましたし、社会の動きやニュースへの感度が高くなりました。

猫にとって正しい選択肢を飼い主が持てるよう情報発信

―今後の目標について教えてください。

ペット業界を変えていきたいという想いを抱いているので、消費者の方に選択肢を与えるためにも、猫と飼い主のための情報を発信していきたいと考えています。たとえば専門家を招いてインタビュー形式で製品選びに役立つ情報を発信したり、グッズ販売以外にもネコの本能に寄り添い、ストレスの少ない生活をサポートしったりしていきます。夢は「ネコがネコらしく暮らせる権利をまもること」です。

最近では、猫の糖尿病の原因として普段の食べ物の影響がある可能性も指摘されていますし、 猫の排せつ物の臭いを消すために使用されている香料の成分も、猫にとって良くないと思われるものが販売されたりしています。現状では、それらに対する規制が何もないので、消費者が選び取る目を養うために、学者の方や企業などと協力して情報提供していきたいと考えています。

―これから入塾してくる方たちへのメッセージをお願いします。

PR塾ではメディアに向けて情報発信する前に添削してもらえるのがとても大きいですし、さまざまなメディアに関する専門家が講師にいるところも凄いです。PRに関して同じように悩んでいる人がいたら協力し合えますし、メディア交流会などでプレゼンすると私の仕事について他の塾生にも知ってもらえるので、取引先を紹介しあったり、お互いの商品を購入したりもしています。さまざまなメリットがあるので、ぜひいろいろなやり方で活用していただきたいと思います。

「ネコがネコらしく暮らせる権利を守りたい」と語る太野さん

―太野さんの猫に対する真摯な思いが伝わってきました。貴重なお話をありがとうございました。

※2024年5月取材当時の情報です。