受講生インタビュー

舞台芸術に特化したPRでメディア掲載多数獲得 演劇の持つ社会的な価値を多くの人に伝えたい―石井理加さん

石井理加さんは、PRプロデューサー、WEBデザイナーとして活躍する傍ら、自分たちで野外に劇場を立てて公演をするユニークな劇団のメンバーとしても活動されています。コロナ禍で観客が劇場に足を運べなくなったことで、配信が行われるようになり舞台のあり方が変わったことを“チャンス”と捉えてPR塾に入られた石井さん。PR塾での学びをどのように舞台芸術の広報PRに生かされているのか、お話をうかがいました。

Profile

舞台公演や文化芸術分野に特化した広報 PR代行業務をメインに、ホームページや動画の制作など、広報にまつわるクリエイティブのプランニングから制作までを一貫して請け負っている。

大学卒業後、カルチャースクールの企画や事務の仕事を経て、「手に職をつけて、自分らしく働きたい」とWEBデザイナーに転職。

2015年に野外に自らの手で仮設の劇場を立てる役者徒党「水族館劇場」に加入、それを機にフリーランスに。

2020年、コロナ禍に多くの舞台が「配信」を始めたのをきっかけに業界の風向きが変わったのを感じ、舞台の宣伝広報でももっとできることがあるのではないかと研究を始める。そして、PRに可能性を感じ、2021年PR塾に入る。

HP:http://ishiirika.com/

Twitter

石井理加 https://twitter.com/ISHII_RIKA_

石井企画室 https://twitter.com/ISHII_KIKAKU_PR

(能楽の体験講座『はじめての能楽お稽古』ではHP制作とメディアPR)

一度はあきらめた芸術の世界へ

―石井さんはこれまでにどのようなお仕事を経験されてきましたか?

大学新卒でカルチャーセンターに就職して、企画や事務の仕事をしていましたが、そこで出会った絵画や、歌、フラダンスなど自分の技術を人に教えている先生方の働き方が魅力的に見えて、自分も手に職をつけたいと思いました。

そこで、職業訓練校でWEBデザインを半年勉強し、WEBデザイナーに転身しました。

―舞台や演劇のお仕事をされていたわけではないのですね

はい。高校生の頃からお芝居や文化芸術は好きで、ずっとその業界で働いてみたいと思っていたのですが、実際の自分の知識、経験のなさからしり込みしていたんです。

WEBデザイナーになって大手企業で働いていた時に、「ここで働いていても人と同じものしか作れるようにならないな」ってふと気づいてしまって、もうここには居られないって思ってしまったんです。それで「人と違うことがしたい」と思って、大学生の頃から大ファンだった「水族館劇場」という劇団に加入しました。野外に自分たちで劇場を建てて公演を行っている、普通とはかなり違う集団です。加入した年の翌年の公演地が三重県での公演だったので、それを機に会社をやめてフリーランスになりました。

それからはWEBデザイナーとして働きつつ、1年のうち1〜2カ月は仕事を休み、劇団で役者とチケット管理、宣伝広報を担当してきました。

―役者として舞台に立ちながら広報も担当されているんですね。以前から舞台に立ちたいと思っていたのですか?

実は本当は舞台には立ちたくないんです。

365日お芝居のことを考えている方も役者だし、1年に1回しか舞台に立たない私もお客様にとっては同じ「役者」。鍛錬を積んでいない自分が舞台に立っていいのかという葛藤があったんです。

お芝居のワークショップなどで勉強もしたのですが、お芝居を創り上げるのはとても細やかな作業の積み重ねで、皆さん日常からとても努力されていて、舞台に立つためにどれだけの膨大な準備をされているかを知ってしまって……。自分はそれがあまりできていないので、正直、できれば舞台には立ちたくはないなと思っています。

ただ、舞台に立つ時は役者として胸を張って舞台に立たなくてはいけないと思っています。舞台にはどうしてもその人の素が表れてしまうと思っているので、日常ひとつひとつを、日々を丁寧に生きようと心がけています。

(北國新聞掲載の様子)

コロナ禍のピンチがチャンスに変わる可能性を感じて入塾を決意

―素敵な心がけですね。PR塾に入ろうと思われたのは何故ですか?

2020年にコロナ禍に突入し、劇場に人を集められない状況になりました。そこで多くの団体が「配信」を始めた時、「今まで劇場に来ることができる人しか観られなかったものが、どこからでも観られるようになったのだから、お客さんが爆発的に増えてもいいはず」と考えたんです。

実際にはそうはならなかったのですが、劇場に閉じ込められていたものが放出され、クローズドだったものがオープンになったのだから、風向きは変わっているはずです。これをうまくメディアに伝えて広げることができれば、もっとたくさんの人に文化芸術を届けられるのではないかと感じてPRを学ぼうと思いました。

去年の春、入塾前に劇団の公演の際に、見様見真似でプレスリリースを書いて送ってみたら、地元の新聞社やケーブルテレビの方が取材に来てくださったんです。そこでメディアに掲載されて、初めて公演を行う土地だったけど「新聞で見たよ」とたくさんの方が声をかけてくださって、応援してもらえて、とても嬉しかったんです。それに、後からアンケートで「新聞で公演情報を知って見に来た」という方がけっこういて、集客につながるということも実感できました。でも、この時のプレスリリースは分かりやすいものではなかったという自覚があったので、きちんと学んで技術として習得したいと思っていました。あと、プレスリリースが書けるようになれば、ほかの劇団さんのお手伝いもできるようになるのではないかと思ったのも理由のひとつです。

コロナ前はメディアに劇評(講評記事)が載った時には、既に公演は終わってしまったり、チケットが完売していることが多く観られないものでしたが、今は配信があるので、見ることができるんです!生で見せることにこだわっていた演劇業界として、背に腹は代えられない思いで始めた配信ですが、すごい可能性が生まれたなと思いました。

―新しい時代の流れを感じられたのですね。実際にPR塾に入ってみた印象はいかがでしたか?

まず笹木郁乃さんの熱意、パワフルさに圧倒されました。受講生の方は色んな方がいらっしゃるのですが、キラキラした経営者の方にばかり目が行ってしまい、場違いなところに来てしまったという緊張感もありました。

―PR塾でどのような成果を得られましたか?

2021年10月に入塾して、早速知人の劇作家からお仕事をご依頼いただいたのを皮切りに、SNS経由で私の活動を知った友人たちからご依頼やご紹介をいただいて、5公演の広報を担当しました。ウェブメディア掲載回数は合計で13回、新聞には10回掲載されました。

最初は「情報を送ったらほぼ100%載せてくれるウェブメディア」での掲載しか獲得できなかったのですが、そのように成果報告をしたら佳世ちゃん(講師の三木佳世子)が「でも、理加ちゃんがプレスリリースを送ったから載ったんだよ!」と言ってくださったんです。それが最初の成功体験で、今でも心の支えになっています。

―舞台のPRをされる中で印象に残っていることや、嬉しかったことを教えてください。

都内で行われる公演だったのですが、都内の新聞社に送ってもどこにも掲載が獲得できず、一縷の望みを賭けて、主演女優さんの出身地の地方紙にアプローチしたところ、取材に来ていただくことができました。その女優さんが、ご家族や地元の友人から反響があったことを、とても喜んでくださったのが印象に残っています。

また、最近は記者さんとの関係性ができてきて「またぜひ情報を送ってください」とか「次は違う切り口で取り上げたい」などと言っていただけるようになったのが、とても嬉しいです。

(舞台公演『Manhattan96 Revue 白昼のグリーンジャーニー』では動画制作とSNS運用、メディアPR)

華やかな成果の裏に地道な努力の積み重ね

―それは嬉しいですね。成果を上げるために工夫されたことはありますか?

週に一度図書館で新聞5紙に目を通して、どのような公演が、どのような切り口で、どのような言葉で紹介されているか、担当記者名を書き出して研究しています。

分析していて気づいたのは、記事でその作品のストーリーが詳しく紹介されるケースはほとんどなく、公演をする側の思いやストーリー、社会的な問題へのメッセージ性などが取り上げられているということです。舞台芸術のプレスリリースの書き方は、普通のプレスリリースの書き方と少し違うと感じています。

それから、取材してくださった記者さんには、公演終了後に終了の報告や、記事を見た方から聞いた感想や反響をお伝えするようにしています。

プレスリリースを送る際も、直近でその方が書かれた記事の感想を添えるようにしています。私自身、演劇が好きで記事を読むのが楽しいですし、感想を伝えることで記者さんに私の視点や考えを知ってもらえるので、良い循環が生まれていると思います。

―地道な努力が実を結んでいるのですね。今後叶えていきたい夢はありますか?

舞台芸術界から適切な内容のプレスリリースをたくさんメディアに送り、もっとメディアに舞台の話題が載るようになって、舞台の持つ価値が多くの人に伝わってほしい、舞台芸術界をもっと活発にしたいと考えています。

また、一年間実際に舞台芸術のPRをやってみて、PRだけではなく宣伝や広報、さらにはマーケティングまで、全部面倒を見てほしいというニーズがあることに気づきました。PRとWEB、SNS、広告などの掛け合わせで、それぞれのクライアントさんの求める成果に対して、いろんな提案ができるようになりたいと思っています。

私は、舞台芸術、エンターテイメントの世界から男女平等やジェンダー問題など社会課題を乗り越えた作品がたくさん発信されることや、テーマとして描かれることで、それを観た人の意識が変わり、社会を変えることができると考えています。お芝居、エンターテイメントだからできる発信の仕方があると思うので、そこから社会を良くしていきたいというのが私の夢です。

―最後に、入塾を迷っている方にメッセージをお願いします。

私は、自分が何かをPRすることで、こんな風に変わりそうだという未来が見えたので、勇気をもってPR塾に入りました。

ここに入って勉強して、技術が身に付いたら未来が変わりそうだという可能性を感じた方は、思い切って飛び込んでみてください。チャレンジしたら結果が出ると思います。

―ありがとうございました。石井さんのこれからますますのご活躍と、エンターテインメントが変えていく社会の実現を楽しみにしております。

※2022年9月22日取材当時の情報です。

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