受講生インタビュー

絵本の楽しさや魅力を「読み聞かせ」を通じて広めたい。保育の現場で読み聞かせの学びを当たり前にするためにPRの力を活用していく。北島 多江子さん

小さな頃から本が大好きだったという北島さん。3人の子どもを子育てされた経験と、未就園児サークルや学校での読み聞かせボランティア、保育科での読み聞かせの講義など、30年近くにわたり読み聞かせに関わってこられました。その経験をもとにまとめた読み聞かせのメソッドが2023年8月に出版されました。もともと、2020年に出版された絵本を広めるために入ったPR塾。そこで出版PRを学び、読み聞かせの書籍を出版するに至った経緯をお聞きしました。


PROFILE

絵本プロフェッショナル協会 代表理事/絵本作家・朗読家

2020年創作絵本『大みそかに、じかんがじゃんけん大会?』出版(第4回絵本出版賞「絵本のストーリー部門」最優秀賞受賞作品)。大学・行政機関で読み聞かせの講師を務めるほか、セミナー開催、認定講師の養成、書店での読み聞かせ会などを定期開催。小学校から高校で未来授業(職業講和)や講演活動を行う。2023年8月に独自の読み聞かせメソッドをまとめた書籍『1秒で子どもたちの反応が変わる!!また読んで欲しくなる読み聞かせ』を出版。

HP:https://ehon-professional.jp
Instagram:https://www.instagram.com/cocoronagomiann

2023年に出版した『1秒で子どもたちの反応が変わる!!また読んで欲しくなる読み聞かせ』

お話の世界を旅することに夢中だった子ども時代

-子どもの頃はどんなお子さんだったのでしょうか?

子どもの頃は、人と話をするよりも一人で静かに本を読むのが好きな子でした。本を開いて読んでいる時は、お話の世界を旅することに夢中になっていました。

父親が休みの日によく図書館に連れて行ってくれました。図書館に行っては、本を借りていたので、絶えず自分のそばには本がありました。その環境は、物心ついてから今に至るまでずっと続いています。

本当に本屋さんが好きで、本屋さんにお布団を敷いて寝たいぐらい。一日中、本屋にいて片っ端から本を読みたい。みなさんがテーマパークに行くときにワクワクする感じで、私は本屋に一歩入ったら、もうそこが私にとってのワンダーランドでした。本の表紙をめくるのがお話のそれぞれドアの入り口みたいで、表紙をめくったらその世界に入り込んで夢中になっていました。

ー本を好きになったきっかけは何かあったのですか?

父が本を好きだったこともありますが、家には、グリム童話やアンデルセン童話、百科事典みたいな分厚い本が置いてありました。好きだったのは、よく雑誌の付録についていたビニールで作られたレコードの「ソノシート」。そのレコードが、朗読のようになっていたり、音楽とか効果音が流れたりして、その音を聞いて自分で場面を想像して過ごしていました。覚えているのは、風邪をひいて学校を休んだ時に、布団のまわりにありったけの本を並べてレコードで繰り返し本を読んでいたのがすごく楽しかったです。

浜松市の小学校で行なったリモートの読み聞かせ

子どもが、創作の道に進みたかったことを思い出させてくれた

ー昔から、起業したいと思っていたのですか?

子どもが、人生を戻してくれたんです。
卒業後は銀行に勤めていたのですが、辞めてから11年、専業主婦でした。一番下の子が幼稚園に入った時に再就職したんです。勤務先が遠くて、子どもの幼稚園の送り迎えを祖父母がしてくれていました。主人も、両親も私がいない間は、子どもと一緒にいてくれたのですが、一番下の子が私を待つのが寂しかったみたいで、精神的にしんどくなってしまったのです。今、この子のそばに居なかったら、一生心の傷を負わせることになると思って、会社を辞めることにしました。

その後、下の子が小学校に入って落ち着いたら、仕事に復帰しようと考えたのですが、その時に創作の道にずっと進みたかったことを思い出したんです。もし、これから新しい仕事をしたとしても勤め先が変わるだけで同じ人生を辿ることになる。もしかしたら、子どもがお母さんの人生はそっちじゃないよって戻してくれたんじゃないかと思ったのです。

それから、創作の道に進みながら、やりがいを感じられるお仕事がないか探しました。そこで見つけたのが、『パステル和(NAGOMI)アート』の公認インストラクターでした。教えながら、自分も創作の道にチャレンジしようと考え、起業の道を選びました。

『パステル和(NAGOMI)アート』認定指定校 公認インストラクターとして活動。最初の講座は、2名でスタート

ーすぐに順調に進んだのですか?

パステル和アートは当時は珍しくて、インストラクターの資格を取ったのですが、なかなか講座を始められませんでした。画材を持って行っても説明の資料を持って行っても、場所を借りられなかったり、チラシも置いてもらませんでした。

その中で、少しずつよかったらここの会場使ってみる?とか、ここでやってみる?という声をかけていただけるようになりました。親からは、講師で収入を得るのは難しいだろうから、パートをしながら休みの日に講師をしたらいいんじゃない?と言われたのですが、私は、伝えたいと思った気持ちは1本に集中しなければ伝わらないと思って。声がかかったら、すぐに行けるように仕事はしませんでした。初めての講座は2名でした。

そこから、常に案内チラシを置いていただけるところを探して、ブログで一生懸命発信しました。そんな風に伝えていった結果、インストラクターを50名養成して、500名以上の方に直接教えることが出来ました。インストラクターさんからまた、体験した人を含めると数千人にまで広がっています。やっぱり想いは伝わると実感しています。

北島さんのパステル作品

高校のボランティア活動で初めて行なった「朗読」。喜んでくれた笑顔が忘れられなかった

ー肩書きに「朗読家」とありますが、いつから朗読をされているのですか?

1998年からボランティアで様々な場所に行って読み聞かせを行なっています。朗読家と名乗るようになったきっかけは、高校生の時の経験です。

高校はボランティアが盛んな学校でした。高校3年生の時にボランティア活動で介護施設を訪れた時、いつもは何か畳むとか食事の介助をしていたのですが、その時は、リウマチを患っている方がおられて、本が大好きなんだけど、自分でページをめくることもできない、小さい文字を目で追うことが出来ないから、代わりに朗読のお手伝いをできないかと呼びかけられたのです。

本が好きでも人に読むことはできないと、グループのみんなは断ってしまって、最後に残ったのが私でした。私がそこで優先したいと思ったのが、その方の本の続きを楽しむ時間を無くしたくないということでした。下手でも、つっかえてもいいから、やりたいと思ったのです。

初めての朗読をとても喜んでくれ、その時の笑顔が忘れられませんでした。それがきっかけで、肩書きに「朗読家」と明記するようになり、子どもが参加していた未就園児サークルで読み聞かせボランティアを始めました。

パステル和アート講師として「NHK文化センター浜松教室」で講座を行なっていたとき、そこの支社長さんが、私の名刺に「朗読家」と書いているのを見て、新設する朗読講座の講師をお願いしたいと言ってくれました。その講座を開講するのをきっかけに、子どもの頃から感じていた「絵本のリズム」や「なぜこのページだけゆっくりめくるんだろう?」という感覚で感じていたことを言語化して、オリジナルのメソッドを作りました。

その講座を終えてからも、読み聞かせの講座をさせていただく機会がありました。静岡県浜松市に「えほん文庫」という家庭文庫があるのですが、そこで絵本に囲まれた中で講座をして欲しいと依頼をいただき、そこで絵本に関するバリエーション豊かな講座を沢山させていただきました。

読み聞かせ講座の様子

読み聞かせ講座の受講生さんがもっと活躍できる場をつくるためにメソッドの書籍化を検討

ー読み聞かせの本を出そうと思われたきっかけがあったのですか?

読み聞かせの仕事をしながら、パステル和アートの仕事もしていましたが、2020年にコロナで読み聞かせの活動の場所がなくなってしまいました。読み聞かせ講座の受講生さんも困られているのを知って、オンラインで教えることができれば、もっとみなさん活動が広がるんじゃないかと考えて、認定講座を新設することにしました。

認定講座を新設したことで、受講生さんの活動の場が広がったのですが、さらに受講生さんが社会的信用を得て、より活動を広げていくためには協会がある方がいいと考えました。その上で、読み聞かせのメソッドが書籍化されたら、認定講師さんも受講生さんもこのメソッドを自分が取得できているという自信につながるんじゃないかと考えていました。

30年挑戦し続けて、初受賞の絵本を出版

ーPR塾で学ぼうと思ったきっかけは何だったのですか?

2007年に仕事を辞めてからパステル和アートを学び、絵本を書き始めました。子どもたちがテレビを見ている様子をキッチンから見ながらだったり、カレーのお鍋を混ぜながら、思いついたストーリーをメモしていました。ストーリーは、子どもが寝静まってから原稿用紙に手書きで書いていました。当時はワープロもなくて、全部手書きで書いて応募していました。

色々な公募に応募して、9割以上落選。そして2020年、書き始めてから30年かかって最優秀賞を受賞し、初受賞の絵本『大みそかに、じかんがじゃんけん大会?』を出版することが出来ました。

出版して初めての年は、書店さんも浜松の地元の作家さんということでたくさん置いてくれました。絵本出版賞受賞の絵本だし、みなさん興味を持ってくれると思っていたら、思った以上に売れなくて。2年目は申し訳ないですけど、置けないですと断る書店さんも出てきてしまい、2年目の時に現実の厳しさを知りました。

せっかく絵本を置いてくれたのに、その本を手に取っていただくことがどれだけ難しいか実感しました。SNSでの発信も限界を感じている時に、インスタグラムでPR塾の広告を目にしました。

最初は、笹木郁乃さんの書籍を購入してプレスリリースを自分で書けばできるかな?と思っていたのですが、行動できなくて。やっぱりプロに学ぶことが大切だと痛感しました。PR塾で結果を出されている人を見て、自分ももしかしたらできるのかなと思いました。それで、勇気を出して入塾しました。

2020年に出版された絵本『大みそかに、じかんがじゃんけん大会?』

ーPRを学んで、何か入って変化はありましたか?

何かを伝える時に、ただ良さを伝えるだけじゃなく、伝えたいことが世の中にどう貢献するのか、伝えた方により良くなってもらうためにとか、相手の向こう側まで見て伝えるという、PR視点を身に付けられたと思います。

また、書店での取り組みの場合、自分の読み聞かせをこの書店で開催しますという告知だけではなく、書店の取り組みを私の記事が掲載されているメディアを見て知っていただくきっかけにもなっています。そのメディアを見て他の書店の方が、コロナで止めていた読み聞かせを再開してくださったりしています。

ーメディア掲載はどれくらいありますか?

小さい記事も含めると、20回ほど掲載していただいています。書店での取り組みは、4回連続で掲載していただき、計5回掲載されています。ケーブルテレビやラジオ出演、保育メディアに取り上げてもらったこともあります。

読み聞かせの活動について紹介された記事

2冊目の絵本を出す予定が一変。読み聞かせの本の企画書を作成し出版社に提出

ー読み聞かせの本を出すきっかけは何かあったのでしょうか?

最初は、絵本の2冊目のストーリーを出版社さんと練っていたのですが、ストーリーが止まってしまって。ある方に私のメソッドの話をしたら、そのメソッドは出版した方がいいんじゃない?多くの人に活用してもらうのがいいのでは?と言ってくださって。それで、出版社さんに申し訳ないと思いながら、読み聞かせメソッドを提案させてもらったのです。

実はPR塾の入塾を決めたのは、出版PRも学べることが大きかったんです。書籍出版の後押しになったのは、PR塾が主催しているメディアの方にプレゼンできる「メディア交流会」でした。そこで出版企画書を見ていただける機会があって、読み聞かせメソッドを書いてみようという思いました。その時添削していただいた内容をもとに練り直していくうちに、絶対出版したいという気持ちが強くなっていきました。

このメソッドを出版し、特に保育業界の先生方に見ていただきたいと思いました。読み聞かせをすることで、子どもの反応が変わるだけじゃなく、想像力や感情が豊かに育まれます。早く届けないと子ども達がどんどん大人になってしまうと思って、書籍化を急ぎました。そして2023年の8月に出版することができました。

書店との信頼は、こまめな挨拶。本はネットではなく書店で予約購入

ー書籍をPRするために書店を回られていましたね?

書籍の予約キャンペーンは、50店の書店が協力してくれました。実際に書店に予約がある、ないに関わらず、私が「キャンペーンにご協力くださっている書店さんです」とリストを紹介させていただくことで、少しでも書店の認知拡大に貢献できるかなと思って頑張りました。協力してくださる書店さんとの信頼関係がすごくありがたいと感じています。

ー書店との信頼関係はどうやって作られたのですか?

『大みそかに、じかんがじゃんけん大会?』の絵本を発売した当時から、大みそかの時期だけじゃなく、普段から買い物に行ったときに寄って挨拶していました。あとは、知り合いの作家さんが新刊を出されたりすると、ネットで予約せずに書店で予約をして挨拶させていただいていました。

今回の出版が決まった時は、SNSで発信する前にお世話になっている書店に事前に報告をさせていただきました。

ー出版して変わったことはありますか?

『また読んで欲しくなる読み聞かせ』は、発売10日で増版が決まりました。読み聞かせをしている書店の「本の王国」というグループ店が全店で協力してくださっています。中日新聞が掲載してくれた記事を見て保育園の先生がお問い合わせをされることが増えたそうで、書店で探し回らなくてもいいように、入口で大きく展開してくださったり、保育コーナーに並べて頂いたり、POPを作ってくださったり、すぐに見つかるように工夫してくれました。

『また読んで欲しくなる読み聞かせ』出版時に一緒に絵本も陳列(本の王国 豊川店)

読み聞かせを専門に学ぶカリキュラムをつくり、保育業界に貢献したい

ー今後の夢があれば教えてください。

『また読んで欲しくなる読み聞かせ』を、もっと保育の先生や保育を学ばれている学生さんに読んでいただきたいと思います。読み聞かせを専門に学ぶ機会はないみたいなので、カリキュラムの中に読み聞かせを学ぶことを入れていただいただきたい。保育研修の講師として、その土壌をつくっていきたいと考えています。

それができるのは、やっぱりPRの力だと思うので、PRで、この書籍とあわせて保育業界に貢献したいと思っています。

子どもたちには伸び伸びと子どもらしく育ってほしい。絵本は、めくればいいんです。メソッドとして書籍には色々書いてありますけど、めくるだけで、読まなくても、絵を見るだけでもいい。それだけで大丈夫なんです。お母さんにはもっと肩の力を抜いて欲しいと思います。

保育科でゲスト講師として登壇される北島さん

ー書籍の出版を実現されたことは、北島さんの丁寧なPR活動の結果だと感じます。これからも応援しています。貴重なお話をありがとうございました。

※2023年10月取材当時の情報です。

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