受講生インタビュー

産前から子育てを学ぶ講座を展開。PRの力を生かし専門家としてステップアップ―上条厚子さん

NPO法人ママライフバランス代表の上条厚子さんは、産前の両親に対して育児について学ぶ機会を提供する「親のがっこう」を運営しています。PR塾のスタート期に入塾し、これまで多数のメディア掲載を獲得、自身と団体の認知拡大を実現してきました(参照記事:https://pr-professional.jp/column/pr-interview-kamijo/)。2度目の登場となった今回は、コロナ禍以降の活動を中心にお話を聞きました。

PROFILE

親のがっこう(NPO法人ママライフバランス)代表。1981年生まれ、2児の母。自身が産後うつになった体験から、ママでも輝ける社会を目指し、クラウドファンディングで資金170万円を獲得して市民団体からNPO法人設立。ボーダレスジャパンで事業への思いをぶつけて1千万円の資金を調達し、1万人のパパママのお悩み解決から生まれた出産準備プログラム「親のがっこう」を設立。名古屋市の受託事業 地域子育て支援拠点事業運営。国連行事、教育委員会、大学や大手企業での子育てセミナーや研修へ多数登壇。NHK、フジテレビ、日経新聞、毎日新聞、たまひよ、マイナビ子育て他、メディア掲載実績多数。

・親のがっこうHP:https://www.oyanogakkou.jp/

・上条厚子Facebook:https://www.facebook.com/salonanelaanela

・産前に育児を学ぶ仕組みを日本に創るプロジェクトのクラウドファンディング: https://for-good.net/project/1001167

・「たまひよ」子育てのミライ応援プロジェクト:https://st.benesse.ne.jp/lp/kosodate_mirai/

母親とは違うアイデンティティを持ちたい女性を支援

―以前はご自宅でエステサロンを開いていたとのことですが、それ以前は何をされていたのでしょうか。

大学生の頃、周りが当たり前のように就職活動を始める中、私は髪の毛を真っ黒にしてみんなと同じリクルートスーツを着るのが嫌でしたし、特に入りたい会社もなかったので説明会に2、3回顔を出しただけで就職活動を止めてしまったんです。それで個人事業主として化粧品の販売代理店を始めて、向いていたのかよく売れて楽しかったですね。でも、24歳で結婚して子供を授かったので、社会人経験は実質2年程度でした。

―LITA代表の笹木郁乃とはPR塾がスタートする前から知り合いだったとのことですが。

専業主婦として子育てだけの生活もPAT活動をするなど充実していたのですが、子どもが幼稚園に行っている間を利用して月に20万円くらい自由に使えるお金が欲しかったので、自宅でエステサロンを開いて、集客のためにアメブロとFacebookを始めました。そんなときに郁ちゃんのことを知り、個別コンサルを申し込んだのが最初の出会いです。その後、彼女がPR塾を開講すると聞き、3期生として入塾しました。

起業当初は8歳と3歳の子育て真っただ中だった

―塾生時代は、メディアアプローチよりもSNSの方を充実させたい希望が強かったんですよね。

そうですね。SNSで集客したいと思っていました。PRするテーマとしてはエステサロンの他に、プライベートで子育てに悩んでいたので子育て関連のセミナー講師の資格を取って、そちらもPRしていきたいなと。

―現在活動している「親のがっこう」の構想はいつ頃からあったのでしょうか。

PR塾に入っていた頃手掛けていたサービスが満席になり、「何々ちゃんママ」とは違う自分のアイデンティティが見つかって「ああ、こんなにも楽しいんだ」と。親が楽しく生きられていると子どもやパートナーに闇雲にイライラすることもなくなるんだと気付いて、子育て中のお母さんたちの悩みを表面的に解決するだけでなく、本当にやりたいことを見つけて夢を叶えるまで伴走できるような形で支援したいと思ったんです。

最初は100人程度のママサークルのような形でしたが、本当に社会にインパクトを与える事業にするために法人化しようと考え、2020年に立ち上げたのがNPO法人ママライフバランスです。資金集めのためにクラウドファンディングを行い、それが現在の親のがっこうの種になりました。

自宅で子育てセミナーを行っていた頃

―それまではメディアアプローチはやったことがなかったんですよね。

はい。そのクラファンのためにメディアアプローチを行ったのが最初です。自分たちの活動をSNS以外でも周知したかったですし、PR塾でプレスリリースの書き方も学んでいましたので実行しました。最初に名古屋の記者クラブ3か所に投げ込みをして、あとは「広報・マスコミハンドブック」などを参照して150通ぐらいのDMを郵送しました。それが「マイナビ子育て」と「KIZUNA STYLE」というメディアで紹介されて、少し経ってからフジテレビの番組にも取り上げられました。その後もメディアに取り上げてもらいたいイベントや新規の取り組みなどがある場面で、継続的にメディアアプローチをしています。

メディア掲載の蓄積による効果を実感

―コロナ禍の期間はPRのやり方などに変化はありましたか。

むしろ、子育て支援の状況を知りたいメディアから取材の依頼が増えました。全国のお母さんたちを孤立させないために、コロナ禍になる前から日本初のオンライン子育て広場というものを始めていましたし、Zoomを使うのが当たり前の世の中になったのでむしろ追い風だったと思います。

―オンラインスクール以外に、ここ数年でチャレンジしたことは何かありますか。

前回LITAマガジンの取材を受けた2020年の時点ではママ向けのオンラインセミナーでしたが、2022年に親のがっこうをつくって妊娠中のプレママ、プレパパが参加できるようにしました。子育てが大変なママたちの支援をずっと続けても、新規で入ってくる人たちがみんな同じような悩みを抱えている状態が続いていたんです。それで、これは構造的な課題だと気付いて、産後の育児がしんどくなる原因はどこなのかと考えた結果、産前から育児について学ぶクラスを作ることにしました。

―既に有識者としてメディアに呼ばれることもあるようですね。

名古屋市のシティプロモーションの場に子育て支援の専門家としてアサインされたり、政党が開く子育て政策づくりのための勉強会に講師として呼ばれたりしています。今後のPRの方向性としては事業の拡大だけではなく、私自身が子育て支援関連の有識者会議などに呼ばれたり、政策提言したりできる存在になっていきたいと思っています。

経済産業省の女性アントレプレナー育成事業で登壇する上条さん

―地道に取り組んできたPRの効果が出ているということですね。

そうですね。回数は数えていないのですが、メディア掲載の実績を毎年コンスタントに出していますし、それを見ていただいて声が掛かることが多いです。SNSやホームページには直近半年以内のメディア掲載実績を常にアップしていますし、やはり自薦ではなく第三者であるメディアによる他薦が蓄積していることが大きいです。特にここ数カ月はその効果を実感できるようになってきました。

―メディア掲載が連鎖するシャンパンタワーが起き始めているようですね。メディアアプローチで特に意識していることはありますか。

記者の方との関係性を続ける事ですね。以前取材してもらったり、名刺交換したりした記者の方にはマメに情報提供しますし、新聞に知っている方の署名記事があったら感想をお伝えするなどして、コミュニケーションが生まれるようにしています。あとは子育て支援団体なので、参加しているお母さんたちを取材させてほしいという依頼が来た時は、こちらも対応するようにしています。

もう一つ、もともと私は児童虐待を未然に防ぎたいと考えて創業したので、悲しいことではありますが児童虐待などの事件が起きてニュースになった際は、有識者としてコメントできますという点も、日頃からメディアの方々に伝えるようにしています。

―現在もメディアプローチは全て上条さん自身で行っているのでしょうか。

そうなんです。イベントのプレスリリースを打つとかであればゆくゆくは誰かに任せたいとも思いますが、広報PRの仕事が好きで苦にならないので自分でやっています。

―どのような点にPRの面白さを感じますか。

自分の事業に対する記者の方の視点が分かりますし、社会的な意義や事業の強みを発見できるところですね。毎回、放送や掲載されるまでドキドキしますが面白いです。実際に見ていただいた方の反響が嬉しいですし、SNSやホームページだけではリーチできない層に、媒体に紹介されることで届くところも大きな魅力だと思います。

スキルだけでなく「PR視点」を学ぶ

―今後の目標について教えてください。

親のがっこうの認知と売り上げの拡大はもちろんですが、自治体と連携したり、事件があったりした時だけではなく、全国ネットのテレビ番組のレギュラーコメンテーター枠も狙っていきたいと思っています。

―最後に、PR塾生や入塾を検討されている方にアドバイスをお願いします。

私の場合、初めてクラファンに取り組んで本格的にメディアPRを開始した6年前からずっと発信を続け、メディアアプローチを続け、講座も続けてきて今の状態になりました。リリースを書いてメディアから何も反応がない時もありますが、それでも止めないことが大切だと思います。

PR塾の良さはプレスリリース作成などのスキルだけでなく、「PR視点」が学べることだと思います。PRを仕事にする方でなくても、社会人としてさまざまな場面で役立つと思いますのでお勧めです。

―まさに、「継続は力なり」を実践して結果を出されているからこその言葉ですね。本日はありがとうございました。

※2024年9月取材時の情報です